センサシステム研究室

広島市立大学 情報科学研究科 情報工学専攻

多孔質シリコンの発光特性に関して

マクロ孔形成の多孔質シリコンについても多くの研究がなされ、大きさが可視、近赤外光の波長領域(μm程度)なので、その構造を制御して光学材料への応用が考えられている。多孔質シリコンは陽極化成という方法で作製します。これは、フッ化水素溶液中でSiに電流を流し、ナノメートル程度の直系を持ったスポンジ状の構造になったものです。

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電気化学エッチング

多孔質シリコンの性質には作成時の条件が多大な影響を与える。シリコン基板をフッ酸(HF)、ジメチルホルムアミド(DMF)の混合液の中に置き、ハロゲンランプ光の照射量を変化させながら電流を数十分間流して陽極化成を行うことで、多孔質シリコンのマクロ孔は形成される。発光の色は作製条件を反映している。(蛍光)。光照射の照度は0から2.5×104 lx まで変化させた。照度が強くなると、形状が「円柱形状」から「円錐形状」に変化し、マクロ孔の底までの深さが浅くなる傾向が見られる(図1)。このような形状の変化には光照射により生じた正孔の増加が関係しているのかもしれない。

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不用意に気体を吸わないために、作業はドラフタ(排気装置)内で行う (図2)。蒸着装置で電極を着けたシリコン(Si)基板をドラフタの中にある白い容器に取り付ける。フッ酸をシリコンの上に流し入れ、気体が流れ出さないようにドラフタの全面扉を閉めて電流を流す(陽極化成)。

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可視発光の測定

作製された多孔質シリコンを除振台の上にある試料支持台に載せる。同じく除振台上にあるレーザーからの光(励起光)をレンズを通して多孔質シリコンに照射すると、可視発光をする。この可視発光をプローブで集めてパソコンにつながった分光器で測定する。実際の測定では、この後、電灯を消し室内を暗くしてから行う(図3)。 

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 作製された多孔質シリコンに紫外線レーザー光(励起光)を照射すると、可視発光をする(図4)。

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照射光と発光の色は異なるので、単なる反射ではなく、多孔質シリコンが関与していることがわかる。可視発光は分光器によりスペクトルとして表される。(図5)

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発光の時間依存性

多孔質シリコンが室温において発光することが知られて以降,構造的,材料的,界面的な観点から,様々な研究が行われた。その中にレーザ励起による多孔質シリコンからの発光強度が時間とともに増加するという報告がある。長時間レーザ照射実験で多孔質シリコンの発光スペクトルの強度変化に注目し、レーザを長時間にわたって断続的に照射した。発光強度の時間依存性(図6)と表面の組成分析のためのフーリエ変換赤外分光(FT-IR)(図7)の測定結果を示す。6時間連続でレーザ照射をしても発光強度は増加し,飽和しない。FT-IR測定結果から主にSi-O-Si結合が増加,Si-Si結合が減少している。

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多孔質シリコンの多孔度測定

多孔質シリコンの発光強度や発光波長には作製条件によって変化す る多孔度と呼ばれる細孔の形成具合を示すパラメータが関係することが知られ ている。多孔度とは多孔質層の体積に対する細孔部分の体積の比であり、元の重量に対する細孔部で溶け出して失われた重量の比でもある。多孔質化して失われた細孔部の重量は陽極化成前後のシリコンの重量の差となり、多孔質層の元の重量はその深さとシリコンの密度、多孔質シリコンの表面積の積になる。 多孔度の陽極化成時間にはあまり依存性しない。フッ酸(HF)濃度依存性は20~40%の場合、濃度の増加に対して多孔度の減少を観測している。

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